「考察」とは

今北産業*1

考察のためには

  1. 文章力が大事
  2. 統計学も大事
  3. 調査能力も大事

 

まえがき

工学部の実験講義で課されるレポートの中で最も頭を抱えたくなるのは、

  • その分量の多さ
  • 何を書けばいいのかさっぱりわからない実験原理
  • 大量のデータ処理がとてもめんどくさい実験結果
  • まず問題文からして言っていることがさっぱりわからない課題

以上4つのいずれでもなく、間違いなく

  • 定性的・定量的な考察

の部分であろう。

 

私が普通科高校に在籍していたときに課された実験の実施回数は片手で数える程度でしかなく、またその実験に関してたとえいい加減なレポートを書いて提出したとしても最低でも「良」(またはB)評価が来たものだった。

しかし大学ではご丁寧にも「定性的・定量的な考察」という評価観点が入ってくる。

普通ならそんなこと言われたって…わけがわからないよ…としょげるところである。

実際私も言っている意味がよくわからなかったので、とりあえずTAから貰ったヒントを活かして、精度や誤差、平均値などを論じたりした。しかし、今考えるともっとやりようはあったのではないかと思う。*2

目的

本記事の目的は、そのような「定量的な考察ぅ?わけがわからないよ…」という、大学1年のときの私のような人に対して、定量的な考察の仕方をまとめて示すことにある。*3

考察とは?

そもそも考察とは、例えば実験結果で見つかった傾向や外れ値の、要因または原因の追究や、実験結果は理論的に得られる結果と比較して妥当であるかどうかの分析を行う、レポートの中では最も重要な部分である。

 

以下しばらくポエム

考察という部分がなかったら、「ピサの斜塔のてっぺんから鉄球を落としたら地面に向かって落ちました、羽を落としたら鉄球よりもゆっくりと地面に向かって落ちていきました!」と報告する「だけ」で済んでしまう。このような報告は観察日記に過ぎない。(極論)

より重要なのは、実験結果についてその妥当性を検証を行うこと、あるいはたとえ後世で間違っていたと証明されてしまうにしても何らかの仮説を立てることであり、そしてその場合は単に仮説をたてるだけではなく、その仮説が成り立つ理由を、レポートを読んだ人が十分納得できるように列挙していく過程にある。

と私は考えている。

ポエム終了

 

考察に必要なこと

考察は学生によってその質と量とに大きく差が出る。

1. 文章力

まず、読み手を納得させるためには、読みやすい文章*4が必須である。

例えば、複数の実験結果について比較するときに、実験1について言及していたかと思えば、いつの間にか断りもなく実験2の結果について言及していていたり、かと思えばやはり何の断りもなく再び実験1の結果について言及している、という場合や、「あれ」や「それ」、「これ」の指示語の先が明らかでない場合があると、「今この文章は何について述べているんだろう?」となりかねない。

適当にガーッと考察を書いているとたまにそういった文章が現れるため、レポートを書くときは「今この文章は何について述べているか」を常に意識することが大切である。

この点を満足するには、何かに言及するときははっきりと対象を述べたり、「これ」といった指示語を控えて「この傾向は」「この結果は」「この値は」といったように名詞を伴って利用するべきであるし、もしどうしても指示語単体を使う必要がでてきたときには、指示先となる文章との距離を最低限に抑えるべきである。また、「しかし」「一方で」「したがって」「ほかにも」「加えて」といった接続詞を適切に使う必要がある。*5 *6

 

この記事にあるような支離滅裂な文章って読んでて辛い。現にいま読み直していて辛い。レポートを読む先生は更に大変だと思う。もしかしたら実は先生方は精神や感情を押し殺してレポートを読んでいるのではないだろうか。あまりに酷い文章だと点数に悪影響を与えているかもしれない。

 

2. 統計学的な知識

実験ではデータを多く扱うので、その処理や表現方法に長けている必要がある。

例えばデータの性質は何でもかんでも平均値で表せばいいというものではない、ということを十分把握しておく必要がある。

この点最も必要になる知識は、やはり統計学の知識である。

平均値

統計学的な量として最初に習う平均値と言う言葉にすら複数の算出方法が存在する。

  1. 相加平均
  2. 相乗平均
  3. 調和平均
  4. …他にある?あったら教えてね
  • 相加平均

$$\mu=\frac{1}{n}\sum^n_{k=1}{x_k}=\frac{x_1+x_2+x_3+...+x_n}{n}$$

相加平均のよいところは簡単なところ。n個の値を足してnで割るだけ。

相加平均の悪いところは単純なところ。1個でも極端に大きな値があるとモロに影響を受けてしまう。

  •  相乗平均

$$\mu_G=\sqrt[n]{\prod^n_{k=1}{x_k}}=\sqrt[n]{x_1x_2x_3...x_n}$$

  • 調和平均

$$\frac{n}{\mu_H}=\frac{n}{\sum^n_{k=1}{\frac{1}{x_k}}}=\frac{n}{\frac{1}{x_1}+\frac{1}{x_2}+\frac{1}{x_3}+...+\frac{1}{x_n}}$$

相乗平均、調和平均の使い所や利点・欠点は知らないので誰か教えて欲しい。

 

これは余談だが高校数学を習っているならば、1と2を「相加・相乗平均の関係式」として一度は聞いたことがあるはずである。*7

 

相加平均にメリット・デメリットが存在することがわかったところで、データの性質を表す他の方法を思い出そう。

 

すると、やはり高校数学で習ったであろう分散や偏差といったことが思い当たるはずである。

(母集団・標本)分散・標準偏差

分散は平均値まわりのデータの散らばり具合を示す統計的な指標である。

標準偏差は、分散のままだと実験データに対して得られる次元が$({もとの次元})^2$ということになってしまうので、$\sqrt{分散}$をとって元のデータとの次元をつじつま合わせした統計指標である。

(数式はどういうわけかMathjaxで入力できないので諦めた)

使いみちとしては、例えば複数回実験を行った場合、得られたデータには「必ず」ばらつきが生じる。

このばらつきの程度を評価しなければ、得られたデータに関して「その結果が得られたのって単なる偶然なんじゃないの?」と言われたときに返す言葉がなくなってしまう。

*8

したがって、実験データに見られる傾向が有意であることを示すために、標準偏差を用いてデータのばらつき具合を評価して、その小ささを示す必要がある。

やる気なくしたのでここまで。

 

正規分布

ここで、正規分布を導入する。(数Bにあったかな?)

正規分布ガウス分布ともよばれる。

 

平均値の不確かさ

正規分布を利用して平均値の不確かさを議論する方法が存在することに気がつけば、あとは容易に定量的な考察のポイントを大量に稼ぐことが可能である。

 

最小二乗法とその評価

最小二乗法、線形回帰、線形回帰の結果得られるR2値といったものもあるが、個人的にちょっと面白いと感じている方法として、「あえて対数をとって線形回帰をとり、その係数から次数を求めていろいろ判断を下す」といったものもある。

 

Excelの機能

特にExcelを使っている場合は線形回帰によって得られるパラメータを事細かに表示してくれたりする便利機能があるので、ぜひ活用するべきである。

  • 機能の有効化方法*9
  • 機能の利用方法*10

 

3. 文献漁り

研究室配属後のことはよくわからないが、どうやら入居したらいろいろ先行論文を読むことになるらしい。その読み物に関して私なりに考えていることは、「先行論文を読むことで研究領域の雰囲気もキーワードもつかめるし、同じ研究を2度繰り返した挙句に卒論発表会で『同じような先行研究あるよ』とすべてを台無しにされる可能性も薄くなる。また、学会で発表されるような論文それ自体は審査を受けているので、安心して参考文献リストに載せることができ、これにより自分の論理をパワーアップさせることができる。」という程度である。RPGか?

以上で述べたように、私は文献漁りを、キーワードをつかむために非常に重要な行動であると考えている。なぜなら、キーワードをつかむことができればGoogle検索なりOPACで書名を検索したり、関連論文を当たることができる、すなわち更に詳しい情報を得られるからである。*11

大抵の場合、ずさんな学生実験でなければ参考文献リストが載っている。これは暗に「お前らこの本借りて読むくらいはしろよ?」という先生からのお達しである。学生の中にはちゃんとレポートを書きましたよという雰囲気を出すために読んでもいない本を参考文献に載せる人もいるかもしれないが、これは愚かな行動である。読んだほうがいい。時々課題の解答すら載っている。

この情報を漁る能力は、定性的な考察において威力を発揮する。

教科書の些細な記述からでもいいので情報をたくさん持っていると、色々と考えを巡らせることができるのである。

 

0.おまけ

プログラミングによる実験を行ったので再実験がいくらでもできる、という場合は、入力データや内部処理を僅かに変えて変化を追って考察を行う、といったことも可能であるが、普通の学生実験では仮説を立てたところで再実験する暇はない。その場合は「こうすればこの仮説について検証することが可能である」という、自らが立てた仮説が正しいかどうかを示すための実験方法を示せばよいのである。

ここで先程の落体の実験の例を再度引き合いに出すことにする。実験結果から「羽は鉄球よりも質量が軽かったのでゆっくり落ちたのだ」と考えたのであれば、「羽は鉄球よりも軽かったために、鉄球に比べて落下に時間がかかったのだと考えられる。このことを検証するには、同じ質量の羽根と鉄球を同時に落としたら同じ時刻に同時に地面に落下することを、実験して示せば良い。」などと記述すれば良い。

もちろん実際には羽に対する空気抵抗が関わっているために、そのような結果が得られるわけではない。そのときは、「羽は手球よりも軽かったために、鉄球に比べて落下に時間がかかった」という仮説を棄却することができる。また、もし再実験の結果から空気抵抗の存在を見抜けたのであれば、「真空中で実験したらどのような結果が得られるだろうか?」という新たな疑問が湧いてくるはずである。

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まとめ

考察は、教授陣にとって「実験を通じて勝手に育って欲しい能力」に違いない。

しかし自分から動かなければ全く育たない能力でもあるので、学部生の間に点数稼ぐという主目的をもちつつ、統計学について色々学んで力をつけていおいたほうがいいかもしれない。

*1:俺は3行といったんだが4行あるぞ?どういうことだ?

*2:そもそも大学1年や2年のはじめの時期に、多くの観点から考察できる人は限られているといってよい。これは経験上の話になるが、私の学科のレポート採点も一部を除いて甘かった。とはいえ採点が厳しい先生は一律で厳しいので、点数が低くても落ち込むことはない。また、時折理不尽な理由で減点されることもあるが気にすることはない。ないったらない。厳しい先生の中で高い点を勝ち取り、その中でも考察の点数が高ければ、それはそれで非常に喜ばしいことである。

*3:

もちろんこんなオープンな場でイキり倒したら「ご高説垂れてるところ申し訳ないけどそれ間違ってるよ」とか「他にもやり方あるよ」とか、「もうちょっとさぁ…数学勉強しよ?」という至極真っ当な指摘が飛んで来ると思うので、そのときは恥を忍んでちゃんと精進します…

*4:読みにくい文章書いておきながら何を偉そうに言ってるんだ俺は?

*5:そういえば「それゆえ」「このため」の「それ」「これ」って指示語を伴う接続語だよなぁと思ったりしている

*6:どうでもいいことですが、私はある本を読んだところ、換言表現である「つまり」「すなわち」の使い方に関する自信を失いました

*7:この関係式は結構強力だったと記憶していて、受験範囲の都合上数3を出題できない某有名文系専門国公立大学の問題では、うまく式変形をすれば微分を使うことなく最大値最小値を求められるパターンが存在するほどである。(隙あらば自分イキり)(微分を使うと2回微分まで求めなければならず面倒だが、相加相乗平均を使うと瞬殺できたパターン)

*8:1回しか実験しなかった場合は当然そのような評価をすることはできない。時間とお金があるなら実験を何回か繰り返すのは大事だと思うの。

*9:ファイル->オプション->アドイン->分析ツール->設定->ソルバーアドイン, 分析ツールのチェックボックスにチェックを入れる->OK

*10:データ タブ-> データ分析 -> 統計学のツールがいっぱい出てくる -> ごちゃごちゃ設定すると勝手に計算してくれる

*11:もちろん見切りをつけることも大事。